川に人がいなくなった
埼玉県のとある町には元荒川が流れていて、小中学生の頃はその川にかかる橋を渡って登下校していた。そこは川の中流域であり、川底は石ではなく泥だったと思う。記憶に残っているのは、水の茶色い汚い川のイメージしかないが、今ではどの川を見ても当時の元荒川を思い出す。
子どもの頃、橋の上から眺めていた、毎日のように変化する川の様子を今でもよく覚えている。大雨で増水すれば野菜やゴミが流れてきたし、水が引けば護岸の草がペタッと寝ている光景に変わった。水の流れが緩やかな時には魚の影が見えることもあった。川べりには小舟が浮かんでいて、その頃は漁をしている人もいた。子どもたちも川で釣りをしていたし、私もそこで初めての釣りを経験した。
しかし、現在は川漁師も子どもたちもほぼいなくなっていると思う。人がたくさん見られるのは桜の咲く時期くらいではないだろうか。鰻屋は今も続いている(もう元荒川産ではないが)ものの、川近くで当時営業していた何軒かの川魚料理店はなくなってしまった。川魚を食べる人が減って、川漁師も減ったのだと思う。川漁をすることがなくなり、川の環境もだいぶ変わったはず。環境が変わるのは自然なことだけど、人が関わらなくなったことで変化するというのは里山のそれと同じだ。
子どもたちが川から消えたのは大人たちが「川は怖いから近づくな」と指導しているからだ。それはごく普通のことだと思うけれど、『怖い』以前に『わからない』というのが大きいのではないだろうか。今の親世代に(多分そのまた親世代も)川で遊んだ経験がある人は多くないと思う。『子どもに遊ばせたいとは思うけれど、自分も体験したことがないから(川との)接し方がわからない。だから近づかせたくない』という大人が実は多いのではないだろうか。
この『川はわからないもの』というイメージを少しでも払拭するために、まずは「川に関心を持ってもらう」ことを目指して活動を始めることにした。
(写真は山形県遊佐町月光川)
川に関心を持ってもらいたい
”箱めがね”が人と川をつなぐ
箱めがねは、潜ることなく水中を覗き見ることができる、海や川の漁師が古くから使ってきた道具です。
奥羽旅人ネイチャーセンターは、子どもでも容易に組み立てることのできる「箱めがねキット」をつくり、ワークショップとキットの販売をしています。
ワークショップでは、箱めがねを自分の手でつくり、川で実際に使ってみます。「つくる」と「つかう」が揃うことが大切なポイントです。
箱めがねという小さな道具を通して、川の歴史や文化,人と川の関わり,道具の使い方と形や材料の意味,森川海のつながり,川での安全な遊び方など、川のまわりに広がる世界観を学びとることができます。簡単につくることができて、大切に使いつづけることで愛着のある道具になります。お子さんの『はじめてのものづくり』にも最適です。
※キット販売以外に、ワークショップのご依頼もお受けいたします。気軽にご相談ください。